街中に突如現れる異空間へ ── 在原業平ゆかりの古刹『不退寺』【見どころ・拝観料・新大宮駅からの歩き方】
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前回の第5弾・佐保川の桜はいかがでしたでしょうか?次の桜のシーズンには足を伸ばそうかな?と思っていただけたなら、とても嬉しいです。
今回からは、同じ近鉄奈良線・新大宮駅から、佐保川の桜とは反対方向(北側)に進み、3つの古刹を巡る旅をご案内します。その1つ目が、今回ご紹介する『不退寺(ふたいじ)』です。
ロケーションの関係もあり、観光客の皆様には少し馴染みの薄いお寺かもしれません。はっきり申し上げて、地味なお寺です。華々しさはありません。けれども、緑のトンネルを一歩くぐれば、そこは別世界。深い歴史が詰まったこの場所は、訪れる価値が十分にあります。
最寄り駅は 近鉄奈良線・新大宮駅(A27) です。
大和西大寺駅(A26)と近鉄奈良駅(A28)のちょうど間に位置しています。
駅から不退寺まで、徒歩約20分(約1.1km)。北方向へほぼまっすぐ歩けば到着です。
不退寺について — 業平寺と「不退」の名
不退寺は、かの百人一首でも有名な歌人・在原業平(ありわらのなりひら)ゆかりのお寺で、業平寺(なりひらでら)とも呼ばれています。正式な名前は、金龍山 不退転法輪寺(ふたいてんほうりんじ)といいます。
天皇の仮の御所から、業平のお寺へ
お寺に伝わる縁起によると、この地はもともと、大同4年(809年)に弟の嵯峨天皇へ位を譲った平城天皇が、平城京の北東に営んだ萱葺きの御殿、「萱の御所(かやのごしょ)」でした。のちに、その皇子である阿保親王と、さらにその子の在原業平が、同じこの地に住んだと伝えられています。
そして承和14年(847年)、業平は祖父・平城天皇の旧居を寺に改め、自ら聖観音像を刻んで、父・阿保親王の菩提を弔いました。「法輪を転じて退かず」という願いを込めて名づけられたのが、不退転法輪寺、略して不退寺です。
不退とは、二度と後戻りしないという意味です。かつて都の頂点にあった人が位を譲り、移り住んだ小さな仮の御所。その跡に、後の世の人が建てたのは、二度と後戻りしないという名の寺でした。このお寺の名前のお話は、今日のひと言「今日をどう生きるかは、あなたの特権」でも書きました。
西大寺・白毫寺と同じ、叡尊による再興
平安時代の終わり、養和元年(1181年)の南都焼討で諸堂は炎上しましたが、鎌倉時代に、第2弾でご紹介した西大寺を復興した興正菩薩叡尊(えいそん)によって再興されました。第4弾の白毫寺と同じく、ここでも不思議なご縁がつながりました。宗派は西大寺と同じ真言律宗です。
「ちはやぶる」の歌人のお寺
境内には、業平の歌碑があります。刻まれているのは、百人一首の第17番です。
ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは
(在原業平朝臣・百人一首 第17番)
紅葉が竜田川の水を真っ赤に染め上げる景色を詠んだこの歌は、競技かるたを描いた漫画・映画『ちはやふる』の題名の元になった歌としても知られています。境内には、業平の晩年の歌とされる『伊勢物語』第88段の歌碑も立っています。
アクセス(基本情報)
不退寺へのアクセス ~ 新大宮駅からの行き方 ~
出発方向によって、最初の数ステップが異なります。
【大和西大寺方面から来られた場合】
【近鉄奈良方面から来られた場合】
ここからは、どちらの方向から来られた方も共通です。
境内を歩く — 石棺から本堂、池の花まで
緑のトンネルを抜けて山門をくぐると、すぐ左手に受付があります。受付にお寺の方がおられない時は、案内に従って、受付を越えた左側の寺務所(御朱印所を兼ねています)へ進み、そこで拝観料をお納めします。あとは順路に沿って、境内を歩いていきます。
はじめに出会う、古墳の石棺
順路に沿って歩くと、まず出会うのが石棺です。境内の案内板によると、近くのウワナベ古墳の南側にあった平塚古墳から掘り出されたもので、長さは約2.7m。舟形の割竹形石棺と呼ばれる形です。案内板には、草刈りの人がこの石で鎌を研いだ跡がたくさん残っている、とも書かれています。お寺よりもさらに古い時代の石が、人々の暮らしの中で使われてきた跡。思わず近くで見入ってしまいます。
本堂 — 業平観音と、奈良で唯一の五大明王
次に、案内に沿って本堂へ向かいます。
本堂は鎌倉時代後期の建物で、国の重要文化財です。小さめのお堂ですが、中にはその規模からは想像できないほど多くのお宝が祀られています。
- 聖観音菩薩立像(業平観音):ご本尊。在原業平が自ら刻んだと伝わる、高さ約1.9mの観音さまです(平安時代・重要文化財)。頭の飾りの帯が大きなリボンのようになっていて、やわらかなお顔をされています。お寺の説明によると、ご本尊はかつては秘仏でしたが、明治以降はずっとご開帳されています。
- 五大明王像:不動明王を中心とする5体の明王像(平安時代・重要文化財)。お寺の説明によると、平安時代に彫られた五大明王像が今も残っているのは、奈良ではここだけだそうです。明王といえば激しい怒りのお顔が普通ですが、こちらの明王たちは、どこか穏やかな表情をされています。
- 地蔵菩薩像も、ご本尊のまわりに祀られています。
私が訪ねた5月(春の寺宝特別公開の期間)には、本堂で業平の画像や聖徳太子像も拝むことができました。中でも業平の画像は、私にとってこのお寺で一番心に残ったものです。いつでも見られるわけではありませんが、もし機会があれば、ぜひご覧ください。
本堂の中は写真撮影ができません。お宝を間近で拝めるのは、ここを訪れた方だけの特権です。ぜひご自身の目で確かめにいらしてください。
多宝塔と、業平の歌碑
本堂を拝んだあとは、多宝塔へ。鎌倉時代中期の建物で、境内で最も古い建物です(重要文化財)。もとは二層の塔でしたが、今は一層目だけが残っています。扉が開かれるのは、業平の命日にあたる5月28日の業平忌の1日だけです。
池に咲く花々
不退寺は花の寺としても知られています。お寺の説明によると、昭和40年ごろから庭園の整備が進められ、今では500種類以上の植物が、一年中途切れることなく花を咲かせているそうです。池には業平橋が架けられ、池のまわりを歩いて巡れる庭園になっています。
拝観案内 — 時間・拝観料・行事
| 拝観時間 | 9:00〜17:00(受付は16:50ごろまで)・年中無休 |
|---|---|
| 拝観料(大人) | 平常 500円/春・秋の寺宝特別公開 600円/業平忌(5月28日)700円 |
| 拝観料(中高生・小学生) | 中学生・高校生 300円(特別公開 400円・業平忌 500円) 小学生 200円(特別公開・業平忌 300円) |
| お支払い | 受付(またはその先の寺務所)で、現金でお納めします |
| 所要時間の目安 | 約30分 |
| 寺宝特別公開 | 春:3月1日〜5月31日/秋:10月1日〜11月30日 |
| 業平忌 | 5月28日(午前11時から法要)・多宝塔の特別開扉 |
| 写真撮影 | 本堂の中はできません |
| 御朱印 | 寺務所(御朱印所)でいただけます |
| 最寄り駅 | 近鉄奈良線・新大宮駅から徒歩約20分(写真付きの行き方) |
| バス | JR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通バス「西大寺駅(法華寺・航空自衛隊経由)」行きで「一条高校前(不退寺口)」下車、北へ徒歩約5分 |
| 駐車場 | 門前に乗用車8台分・無料(業平忌と紅葉の見頃には停められないことがあります) |
※ 2026年10月、不退寺の公式サイト・奈良市観光協会で確認しました。所要時間はお寺の目安で、私(まさる)もおよそ30分でした。お出かけ前に最新情報をご確認ください。
おすすめの訪ね方 — 朝一番に
おすすめの時間帯は、朝一番の、人が少ない時間です。まだ受付にお寺の方がおられず、寺務所まで拝観料を納めに行くくらいの時間に着くと、境内の静けさがいっそう深く感じられます。拝観の受付は9時からです。
境内で過ごす時間は、30分ほどが目安です。本堂にはお寺の方がおられるので、気になることがあれば尋ねてみるのもよいと思います。
不退寺のまわりは「平城宮跡・佐保路・佐紀路」と呼ばれるエリアの一角で、落ち着いた古寺が点在しています。時間と体力に余裕があれば、新大宮駅から北へ、その後西へ歩いて、No.007 海龍王寺(不退寺から徒歩約20分)、No.008 法華寺(さらに約5分)、そしてNo.009 平城宮跡(さらに約15分)と巡る1日コースにしてもいいですね。ただ、4か所を回るとかなりの距離を歩くことになるので、慣れない方は無理をなさらないでください。平城宮跡は、ふだんは大和西大寺駅から訪ねる場所なので、別の日にゆっくり訪ねるのもおすすめです。
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季節の楽しみ — 一年中、花の途切れないお寺
奈良市観光協会の「花だより」によると、不退寺では次のような花が楽しめます。
- れんぎょう(約500本):3月中旬〜4月上旬
- 黄菖蒲:5月上旬〜中旬
- 睡蓮:6月下旬〜11月
- 椿(300本以上):10月〜5月
- もみじ:11月下旬〜12月上旬
春と秋には寺宝特別公開も行われるので、花と合わせて訪ねる時期を選ぶのも楽しいと思います。
よくある質問
不退寺の拝観料はいくらですか?
大人は、平常500円、春(3月1日〜5月31日)と秋(10月1日〜11月30日)の寺宝特別公開の期間は600円、5月28日の業平忌は700円です。受付(またはその先の寺務所)で、現金でお納めします。
拝観にはどれくらいの時間がかかりますか?
お寺の目安は約30分で、私もおよそ30分でした。拝観の受付は9時から16時50分ごろまでで、年中無休です。
写真は撮れますか?
本堂の中は撮影できません。境内の石棺や多宝塔、池の花などは、この記事のように撮影できました。
バスでも行けますか?
はい。JR奈良駅・近鉄奈良駅から奈良交通バス「西大寺駅(法華寺・航空自衛隊経由)」行きに乗り、「一条高校前(不退寺口)」で降りて、北へ徒歩約5分です。電車で来られる方は、近鉄新大宮駅から写真付きの行き方をご覧ください。
業平の画像はいつでも見られますか?
いつでも見られるわけではありません。私が訪ねた5月(春の寺宝特別公開の期間)には、本堂で拝むことができました。ご本尊の聖観音菩薩立像と五大明王像は、一年中いつでも拝めます。確実に見たいものがある方は、お寺(電話 080-8943-1201)にお問い合わせください。
御朱印はいただけますか?
はい。受付を越えた左側の寺務所が、御朱印所を兼ねています。
不退寺の魅力
今回のレポート、いかがでしたか?
不退寺は、はっきり言って地味なお寺です。奈良の深い田舎にある古いお寺、というイメージで、華々しさは全くありません。少なくとも私が訪ねた時間帯には、海外の方の姿もほとんど見かけませんでした。次回以降にご紹介する海龍王寺や法華寺とも、また異質のお寺です。
でも、だからこそ。緑のトンネルをくぐれば、そこは別世界。静かでこじんまりとした境内で、沢山の日本の宝を前にし、自分とも向き合う。そんな異空間・非日常を、ぜひ味わっていただきたいと思います。
当ブログは今後も、皆さんが気づかないこんな所に、味わいのある場所がありますよ、ぜひ一度ご自身の目で確かめにいらしてください、ということを伝えていきます。
太古の昔から時が止まった寺、不退寺へ 🏯
是非、太古の昔から時が止まった寺、不退寺を楽しんでください。
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