第 121 回

初瀬の山あいに続く長谷寺の参道を、幾重にも折れながら登廊が本堂へと導いていく。三百九十九段の石段の先、内陣には像高十メートルを超える十一面観音が、大きな岩座の上に静かに立っておられる。室町の昔、天文七年(1538年)に彫られたこの像は、木造の仏像としては日本最大級と伝わる。

年に定められた期間だけ、参拝者はその内陣に入ることを許される。塗香で身を清め、五色の紐を手首に結んでもらい、そっと足元へと近づく。差し出された手が触れるのは、観音の御足。

長い歳月、幾千幾万という手がそこに触れてきたのだろう。金色に輝いていたはずの御足は、今では多くの人の指先によって、黒く磨かれている。

『人の立場になって』考える。

では、具体的な方法はどうすればいいのか?

英語に分かり易い表現がある。

今日は、日本語を離れて、英語にヒントを見い出してみよう。

" Put yourself in someone's shoes "

直訳:その人の靴を履こう。

観音の御足に触れたその瞬間、言葉は要らなかったという参拝者の話をよく耳にする。ただ手のひらに伝わる、石の確かな感触だけがそこにあったのだと。黒く磨かれたその御足は、何百年もの間、幾千幾万の手がそこに触れ、そこに立ち続けてきた証である。今日もまた、誰かがそっと手を伸ばし、静かにその場所に触れている。

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