第 103 回

多武峰の山あいに、一つの出会いから日本の歴史が動いた場所がある。

飛鳥の法興寺で催された蹴鞠の会で、中大兄皇子の履が脱げて飛んだ。とっさにそれを拾い上げ、両手で差し出したのが中臣鎌足だった。この些細な出会いをきっかけに結ばれた二人の絆は、やがてこの山の中腹へと二人を導く。

藤の花が咲く頃、二人は人目を避けてこの山中で語り合い、後に大化の改新と呼ばれる大事を計画した。彼らが語らったその場所は「談い山」と呼ばれるようになり、それが今の社名、談山神社の由来となっている。

『ご縁』はおカネでは買えない。

自分の周囲の人・もの・場所・事象との出会いは、 何事にも代えがたい貴重な『ご縁』。

それらは決して当たり前ではない。

その『ご縁』を紡いでくれた全てに感謝しよう。

石段を登る参拝者の多くは、この山のどこかに、一足の履を拾ったという小さな出来事から始まった物語が眠っていることを知らない。それでも山は、千三百年以上前に結ばれたその繋がりを、今日もひっそりと抱き続けている。

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