第 104 回

明日香村の南、稲渕の集落には、幾重にも重なる棚田が緩やかな斜面を覆っている。中世の頃から人の手で切り開かれてきたというこの棚田は、日本の棚田百選にも選ばれ、今なお四季ごとに違う顔を見せる。

春に苗が植えられ、夏の間、稲は真っ直ぐに天を仰ぐように青々と伸びていく。強い日差しを浴び、風にそよぎながらも、その姿はどこまでも凛としている。

そして実りの秋を迎える頃、あれほど胸を張っていた稲穂は、一つ、また一つと頭を垂れ始める。籾が重みを増すほどに茎はしなり、やがて棚田全体が、深く頭を下げたような黄金色の海となる。

日本には古くから、 『実るほど頭を垂れる稲穂かな』という言葉がある。

年齢や、苦労、そして経験などを積み重ね、 世の中のことを学べば学ぶほど、 自分が思っていた程偉くもないことに気づき、理解する。

他人や周囲に対して威張るのは、 他人や周囲にただ甘えていることに他ならない。

風が渡るたびに、無数の穂先が同じ方向へわずかに揺れ、また静かに頭を下げていく。誰に教えられるでもなく、実った稲は皆、同じ姿でそこに立っている。

🌐 他の言語で読む: English 繁體中文