第 097 回
春日大社の御本殿は、二十年に一度、社殿を新しく建て替える「式年造替」という神事によって守られてきた。奈良時代から数えて、今回で六十回目を迎えるという、千二百年以上途切れることのない営みである。
屋根を葺く檜皮も、朱に塗られた柱も、二十年という歳月の中で少しずつ色褪せ、傷んでいく。老朽化してから慌てて直すのではなく、美しさを保てるうちに、あらかじめ建て替える。そこには、もう一つの意味も込められているという。
まだ技を学び始めたばかりの若い職人が、初めての造替を経験する。次に巡ってくる二十年後には、熟練の技を持つ立場となって、また新たな若手にその技を手渡す。設計図だけでは表せない指先の感覚や、造替にかける思いは、こうして人から人へと、途切れることなく渡されてきた。
いち早く結果を出すことの意義は否定しない。
しかし、結果のみに固執するのは本質からずれている。
本来の目的は、結果を出すまでの過程の中で
経験や知見を体系的に身に付け、
それを人生に取り入れていくこと。
よって、早く結果が欲しいと焦るよりも、
日々の過程の中で色々なことが
自分の身になっていくのを楽しもうじゃないか!
本殿を彩る朱色も、屋根を守る檜皮も、その奥では、二十年という歳月をかけて職人から職人へと受け継がれていく、目には見えない手わざが今日も静かに積み重ねられている。