第 096 回

生駒山系の南に連なる信貴山は、標高437メートルの山腹に朝護孫子寺を抱く、古くからの信仰の山である。今から千四百年余り前、聖徳太子は、物部守屋討伐に向かう途中、この山で戦の勝利を祈ったと伝わる。

その時、天空はるかに毘沙門天王が出現し、必勝の秘法を授けたという。伝えられるところによれば、それは寅の年、寅の日、寅の刻——夜明け前のわずかな刻限のことだった。

太子がこの山に至ったのは、その一度きりの巡り合わせのためだったのかもしれない。以来、信貴山は毘沙門天と寅の御縁によって結ばれた聖地として、千四百年の時を超え、今も多くの人々を迎え続けている。

人生において、
"ある人やもの、そして場所などにもっと早く出会っていたら、
自分の人生はもっと良いものになっていたのではないか?"
と感じることがある。

しかし、そのタイミングで出会うべくして出会っているのだ。

その出会う順序にも意味がある。

たとえ自分が理想とする順序で出会ったとしても、
結果は思ったものと違うものになるということはよくあることだ。

自分が出会ってきた順序と、そのご縁に感謝しよう。

山門に据えられた大きな張り子の虎を見上げるとき、参拝者もまた、それぞれの人生でめぐり合ってきた人やものを、静かに思い返す。

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