第 066 回

奈良の南、吉野から山を分け入ると、大峰山脈が空へ向かって連なる。その中心に位置する山上ヶ岳は、古来より修験道の聖地として知られ、今も修行者が険しい道を歩き続けている。

夏のある朝、山道に足を踏み入れると、すぐに傾斜が増す。ぬかるんだ土、剥き出した岩、張り出した木の根。鎖場に差しかかると、鉄の鎖をつかんで体を引き上げなければならない。足の踏み場を一つずつ確かめながら、それでも前へと体を運ぶ。

山頂の大峰山寺に近づくほど、風が強くなる。霧が流れ込んでは、また消える。修行の道に、近道はない。

「物事がうまく進まない。」 そんな時は、大いにもがこう。

人間は苦境の時こそ、大きく進化するチャンス。

安寧や、ぬるま湯は、退化するピンチ。

もがいている時間は、何かを削り出している時間でもある。安定した場所では生まれてこなかったものが、苦境の中でだけ、ゆっくりと形をあらわす。

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