第 065 回
奈良と三重の県境に、高見山という山がある。標高千二百四十九メートル。近畿の山の中でも、険しい登山道で知られている。
登り始めてしばらくすると、木の根が張り出した急坂が続く。息が切れる。汗が目に入る。足を置くたびに、石が小さく動く。立ち止まって見上げても、樹冠が空を遮り、頂はまだ遠い。
しかし、稜線に出たとき、視界が一気にひらける。大和の盆地も、台高の山並みも、眼下に広がっている。さきほどまで足を踏みしめていた急坂は、静かな山の斜面として、ただそこにある。
あなたは今、何らかの苦境にいるかも知れない。
しかし、数年後それらを克服したあなたは
振り返って「あの時は頑張ったな。」と懐かしむ。
そう振り返る時には、" もう戻れなくなっている " 今この瞬間。
だから、今、この瞬間の苦しみをも楽しもうじゃないか!!
苦しかった時間は、記憶の中でも消えない。それはいつか、あなたが歩いてきた道の一部として、静かに残り続ける。