第 107 回
学園前の、緑に囲まれた閑静な住宅街に、大和文華館という美術館がひっそりと佇んでいる。
昭和三十五年、近畿日本鉄道の創立五十周年を記念し、日本美術の素晴らしさを世界へ伝えたいという一人の願いから、この場所は動き出した。まだ何もない戦後間もない頃、初代館長となる美術史家が一点また一点と作品を集め、建築家が自然との調和を心に留めながら設計を重ね、少しずつ一つの美術館が形づくられていった。
今、館内の展示室に並ぶ絵画や陶磁器もまた、遠い昔、名もなき誰かの手によって、ゼロから生み出されたものばかりである。
「クリエイターのみなさん、こんにちは!!」
「いえ、私クリエイターじゃありませんよ。」
「いえいえ、あなたもクリエイターです。」
「ご自分の人生をクリエイト(創造)しているのですから、 この世の全ての人間はクリエイター(創造主)です!!」
これは、『原因自分論』を 別のポジティブな言い方にしたものでもある。
展示室を巡る来館者の多くは、目の前の一枚の絵に見入るばかりで、それがかつて誰かの手によって何もないところから生み出されたものであることまでは、あまり意識しない。けれど窓の外へ目をやれば、自然との調和を願った誰かの構想が、庭の佇まいの中に今も静かに息づいている。ここに在る全てのものが、かつて誰かによって創られたのだと気づいた時、この館そのものが、そのことを静かに物語っているのかもしれない。