第 101 回

東大寺・大仏殿は、今の壮麗な姿に至るまで、二度も業火にのまれている。

治承4年(1180年)、平重衡による南都焼討ちで、創建当初の大仏殿は焼け落ちた。鎌倉の世に再建されたその姿も、永禄10年(1567年)の戦乱で再び灰と化した。

それでもその都度、焼け跡の上に新たな柱が立ち、屋根が架けられた。江戸の世、宝永6年(1709年)、今私たちが目にする大仏殿として蘇った。

「あのつらい想いだけは忘れない。」「あの人だけは許さない。」

人には消したい記憶の1つや、2つはあるだろう。

しかし、もしあなたが今幸せを感じているのなら、『今までの全ての経験が今の自分に導いてくれた』と捉えればどうだろう?忌々しい記憶にすら、感謝できる様になる。

もしあなたが今幸せを感じないのであれば、その消したい過去をいつまでも掴んで手放さないことが原因かもしれない。

全てはつながっている。

大仏殿は、二度焼かれた記憶を消し去って今あるのではない。その焼け跡の全てを内に抱えたまま、今日もこの場所に静かに立ち続けている。

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