第 093 回
光明皇后が建てたと伝わる法華寺には、「から風呂」と呼ばれる蒸し風呂の言い伝えが残されている。皇后は千人の病者を、自らの手で洗い清めると誓ったという。皇位に連なる身でありながら、その手を汚すことを厭わなかった。
千人目に現れたのは、全身に膿をたたえた重い病を患う者だった。人々が思わず目を背けたその姿に、皇后は迷わず歩み寄り、体を洗い清め、傷口にそっと自らの口を寄せたと伝えられている。
次の瞬間、その体は黄金の光を放ち、如来の姿を現して天へと昇っていったという。皇后が差し出したものは、はじめから見返りを求めた行為ではなかった。
「あの人は豊かだから、(心に余裕があって)人に与えることが出来る。」!?
しかし、実態は逆である。
心に余裕があるから、豊かになる。
人にGIVEするから、豊かになる。
人や社会に貢献できるから、豊かになる。
それは必然だったのだ。
皇后が手にしたのは、位でも財でもなく、与えたその瞬間にすでに満たされていたものだったのかもしれない。