第 092 回
東大寺・南大門は、鎌倉の世に俊乗坊重源が心血を注いで再建して以来、八百年以上にわたりこの地に立ち続けている。高さ二十一メートルを誇る巨大な二重門は、幾星霜の風雨にさらされながらも、当時のままの姿を今に伝えている。
門をくぐった人の数は、この八百年で幾千万にも及ぶだろう。しかし門そのものにとって、その膨大な人の流れは、まるで一瞬の出来事のように感じられているのかもしれない。
見上げれば、太い欅の柱に幾重にも重なる木目、長い年月に磨かれた質感が目に飛び込んでくる。急ぎ足で通り過ぎる人には気づかれることのない、静かな時の堆積がそこにはある。
悠久の歴史の奈良にあると、1人の人間の時が経つのは「あっ」と言う間に感じるもの。
しかし、時を " 伸ばす " 方法がある。
それは、何か新しいことに取り組むこと。そして、日々の一瞬一瞬に感謝すること。
これだけで、脳は日頃の習慣とは違う刺激を受け、時を長く感じることが出来る。
今この瞬間、南大門を吹き抜けていく風もまた、二度とは巡り会えないものなのかもしれない。