第 090 回
奈良坂を上った先にある般若寺は、古くから「コスモス寺」として親しまれてきた。秋になると境内は一面のコスモス畑に覆われ、訪れる誰もがその眺めに息を呑む。
けれど、一輪一輪をよく見れば、決して華やかな花ではない。細い茎の先に、小さな花をひとつ咲かせているだけの、ごくありふれた姿だ。
その一輪が、何千、何万と積み重なって初めて、あの見渡す限りの景色が生まれる。誰か一輪が近道をして、他より先に大きく咲くわけではない。ただ、同じ小さな営みを繰り返した先に、あの圧倒的な眺めが静かに立ち上がっている。
派手なことはしなくていい。
小さな一歩でも、日々コツコツと続けるだけで何かを成し遂げることはできる。
一見、遠回りしている様で実はそれが1番の近道。
華やかに見える一面の花畑も、その正体は無数の小さな積み重ね。遠回りに見えたその道のりこそが、いちばんの近道だったのかもしれない。