第 089 回

夏の朝、喜光寺の境内には蓮の鉢がいくつも並んでいる。同じ日に蕾をつけたはずなのに、すでに大きく花開いているものもあれば、まだ固く閉じたままのものもある。

隣の鉢を気にする蓮などいない。ただ、それぞれの時間の中で、静かに開こうとしているだけだ。

本堂の奥には、東大寺の大仏殿を建てる前に、その規模や工法を確かめるために建てられたと伝わる「試みの堂」が今も静かに佇んでいる。大きな挑戦の前には、誰にでも助走の時間が必要だったのだと、この場所は静かに教えてくれる。

やる気と希望を胸に何か行動を起こしたはずだ。

しかし、気がつくと周囲と比べてしまい、「もっと頑張らないと。」 とか、「それに比べて自分は…。」 と焦る。

こんなはずじゃなかった...。

しかし、あなたはあなたのペースでいい。

あなたは、そのままで素晴らしい存在なのだから。

蓮は、誰かと開花を競っているわけではない。ただ、自分の時間を生きているだけ。それだけで、もう十分に美しい。

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