第 064 回
奈良市の南、静かな住宅地の中に、大安寺という古寺がある。奈良時代には東大寺と肩を並べる天下の大寺と呼ばれた寺院だが、今は木々に囲まれた、こぢんまりとした境内だ。
朝早く訪れると、誰かが石畳を掃いた跡がある。落ち葉が端に寄せられ、境内がすっきりと整っている。本堂の前の梅の木の根元には、丁寧に雑草が抜かれた土がある。
華やかな行事もなく、大勢の参拝客もいない。ただ毎朝、誰かの手が動いている。その繰り返しが、静かにここを守り続けている。
『過程』にこそ、人生の醍醐味がある。
もちろん、結果や成果が要らない訳ではない。
しかし、過程こそ日常であり、よって人生そのものである。
結果や、成果は一瞬。
その次の瞬間には、また次の過程が始まっている。
結果は、長い道のりの中にある一枚の景色に過ぎない。次の瞬間にはもう、また歩き出している。その続きの一歩一歩が、あなたの人生をかたちづくっていく。