第 058 回

明日香村の山あいに、稲渕の棚田がある。急な斜面に、幾段もの水田が刻まれている。

見上げると、田んぼは斜面に沿って折り重なるように続いている。それぞれの段は狭く、形もさまざまだ。斜面を無理やり均したわけではない。かといって、あきらめたわけでもない。

土地の傾きをそのまま受け入れながら、それでも実を結ぶ場所を作ってきた。そのひとつひとつが、静かな知恵の積み重ねに見える。

『0/100(ゼロ/ヒャク)』ではなく、 『是々非々』で生きるだけで、人生ずいぶん楽になる。

是々非々は、どっちつかずにあらず。
是々非々は、中途半端にあらず。

是々非々は、臨機応変。
是々非々は、バランスの取れた生き方。

棚田の水面には、今日の空が映っていた。白い雲が、ゆっくりと流れていく。

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