第 050 回
奈良県桜井市の山あい、多武峰(とうのみね)に向かう道は、谷に沿ってゆるやかに登っていく。
談山神社の境内へと続く石段は、木立のなかをひとすじに延びている。一段踏み出すたびに、麓の景色が少しずつ遠くなっていく。
急ぐ人はいない。誰も追ってこない。風と、自分の足音だけがある。
「千里の道も一歩から」
いきなり大それたことをするのは簡単ではない。
小さなことから始めるのがコツ。
身近な人に、「ありがとう」と言ってみよう。
いつもと違う道を使ってみよう。
最初の一段は、思っているよりずっと近くにある。