第 043 回
東大寺のほど近く、奈良公園の一角に正倉院がある。奈良時代、聖武天皇の遺愛品をはじめとする宝物が納められ、約1300年、その扉は静かに守られてきた。
収められているのは、絹織物、ガラス器、薬物、古文書——誰かの「財産」としてではなく、次の世代へと手渡すものとして、ただそこに在り続けている。
校倉造りの木肌に、静かな光が落ちる。毀誉褒貶とは縁遠い佇まいで、この建物はいつも静かにそこに在る。
損得への執着を断った時、心の豊かさが整ってくる。
心の豊かさが備われば、物質的な豊かさは後からついてくる。
何かを得ようとするより、ただ在ることを許した時間の先に、この場所は立っているように思える。