第 031 回
興福寺の五重塔が、奈良の空に静かにそびえている。
猿沢池にその姿を映しながら、何百年もの時をただ在り続けてきた塔。力むことなく、押しつけることなく——ただ、そこに在るだけで、人を惹きつける。
その前に立ったとき、ふと昔の自分を思い出した。何かを手に入れようと、ひたすら力んでいた頃のことを。力を入れれば入れるほど、なぜか遠ざかっていくような、あの感覚を。
何かをがむしゃらに追い求めていた頃、何故か物事が上手く行かなかった。
ある時、気づいた。
自分は執着していたことに。
執着を断った時、人生が好転し始めた。
確信した。『NO 執着 GOOD Life !!』
握りしめているものを、そっと手放してみる。失うのが怖くて掴み続けていたものが、実は自分を縛っていたのかもしれない。手放した先に、軽やかな風が吹く。