第 117 回

宇陀の山深く分け入った先、深谷と呼ばれる渓谷の奥に、龍鎮神社は静かに佇んでいる。社殿の手前を流れる小さな川を渡ると、拝殿の脇に落差およそ四メートルの滝が現れる。滝壺の水は天候や見る角度によって、エメラルドグリーンにもコバルトブルーにも色を変えるという。

江戸時代の初め、この地の海神社に仕える人々は、雨を司る龍神・高龗神を祀るにふさわしい聖地を探し求め、山野を歩き続けたと伝わる。まだ見ぬその場所を、確かにどこかにあると信じて歩き続けた末に、たどり着いたのが、この深谷の渓谷だったという。

日照りが続くと、人々は日が沈むのを待ち、松明を手にこの山道を登った。まだ一滴の雨も降っていないそのときから、恵みの雨がやがて降ることを疑わず、祈りを捧げ続けたと伝わっている。

目標や、夢は追い求めないと叶わない。

しかし、追い求めすぎても上手く行かないのが この世の不思議な性質。

執着を断ち、健全に筋道を立てて追い求めて初めて 目標や、夢は叶う。

コツは、日々をあたかもその目標や、 夢が既に叶ったかの様に振る舞い、楽しむことで、 目標や、夢の実現は近づく。

今も龍鎮の滝は、誰かが訪れようと訪れまいと変わらず澄んだ水をたたえ、その色を静かに映し続けている。かつて松明を掲げた人々が、まだ降らぬ雨を確かに信じて祈ったように、目には見えぬ未来を、既にそこにあるものとして心に描くこともまた、一つの祈りの形なのかもしれない。

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